成年後見制度

 成年後見制度とは、精神上の障害 (知的障害、精神障害、 認知症など)により判断能力が十分で ない方が不利益を被らないように家庭 裁判所に申立をして、その方を援助し てくれる人をつけてもらう制度です。

 成年後見制度には3つの種類(類型)があり、判断能力の低下が重い順から、「後見」「保佐」「補助」となっています。

具体的には】

 ・日常生活のお金の計算や管理ができな くなった。

 ・家にあるのに同じ商品を買ってしまう。

 ・高額な商品を騙されて契約してしまっ たがそのことに気づかない。

 ・通帳や印鑑をよく無くすことがある。

 ・介護保険等の契約ができなくなった。

 

 上記の方に対して支援をしていく人を成年後見人(保佐人や補助人)と呼び、日常生活や金銭管理のサポートをしていきます。

【成年後見人の仕事】

 「財産管理」・・・本人に代わって財産の管理を行います。財産を維持することだけでなく処分することも含まれており、その内容は日常生活の金銭管理から重要財産の処分まで多岐にわたります。

 

 「身上監護」・・・本人の生活や健康に配慮し、安心した生活がおくれるように契約等を行います。法律行為によるものであり、本人

  に対し直接介護や看護、医療の同意等をすることは含まれていません。

【成年後見人の仕事の流れ】

 1.初めに本人(支援を受ける人)がどのような生活をしているか、またどの位の財産を持っているのか、財産の調査を行います。

 2.本人に合った生活の仕方やお金の使い方を考えていきます。

 3.裁判所に報告するために「収支予定表」「財産目録」等を作成します。その他、裁判所に伝えておきたいことがある場合は「上申書」や「連絡票」に記入し、報告します。

 4.本人、家族等と話をし、どんな生活をしていきたいか、必要な福祉サービスや制度を考え、契約をします。また、年金を受け取るために必要な手続きを行ったり、本人が施設での生活を希望している場合は施設入所の手続き等、本人の生活の質(QOL)の維持に努めます。

 5.本人が悪質な業者に騙されて、不必要な物を買ってしまった。又は買わされる等のトラブルに巻き込まれた場合にはその契約を取り消す等の対応を行います。

 6.年1回、本人の健康状態や生活状況、財産等について裁判所に報告をします。

【成年後見制度で選ばれる人】

 成年後見制度では認知症や精神上の障害により判断能力が衰えた方に対して、その程度により、家庭裁判所より3類型のどれかが付されます。選任された方をそれぞれ「後見人」「保佐人」「補助人」と呼び、支援される方(本人)を「被後見人」「被保佐人」「被補助人」と呼びます。

 成年後見人等は誰でもなれますので、家族や親族、第三者である他人でもなることができます。また、親族が成年後見人等になることを「親族後見人」、第三者である専門家がなることを「専門職後見人」と呼んでいます。

<成年後見制度の3類型>

 「後見」・・・ほとんど判断が出来ない方を対象

 「保佐」・・・判断能力が著しく不十分な方を対象

 「補助」・・・判断能力が不十分な方を対象

 

← 一般的なチラシに載っている3類型についての

説明がわかりづらい・・・


↓そこで3類型についてわかりやすくするために・・・

 【成年後見人等が本人のために使える権利】

 「同意権」・・・本人の行動について同意をする権利

 「代理権」・・・本人に代わって契約等の法律行為を行う権利

 「取消権」・・・本人の行った契約等の法律行為を取り消せる権利

 

 成年後見人等になると本人のために使える権利が3つあります。

 この3つの程度により、「後見」「保佐」「補助」という3つの類型について理解をしていくとわかりやすいです。

<成年後見制度の類型>

 ※民法13条1項(保佐人の同意を要する行為等)

  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならなに。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。

  1.元本を領収し、又は利用すること。

  2.借財又は保証をすること。

  3.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

  4.訴訟行為をすること。

  5.贈与、和解又は仲裁合意をすること。

  6.相続の承諾若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

  7.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付き贈与の承認をすること。

  8.新築、改築、増築又は大修繕をすること。

  9.短期賃貸借に定める期間を超える賃貸借をすること。

 10.前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。 

<成年後見制度利用の図>

 上の図のように祖父が認知症や精神疾患により、判断能力が衰えた場合に専門職による成年後見人等が裁判所より選任されます。

もちろん、この方に成年後見人等になってほしいという要望を記載し、申請することも可能です。

 ただし、100%、選んだ人が成年後見人になるとはかぎりません。

 成年後見人等は本人の財産や身上監護(日常生活の安全)を守るため、裁判所より、それらの対応が不適切だと判断された場合は第三者である専門職が選ばれることがあります。

<成年後見制度利用の図>

 上の図のように親族や家族等が成年後見人等になることも、もちろん可能です。

 その場合、裁判所の判断で、専門職の後見監督人が付される場合があります。

 この場合も前記述のように、成年後見人が本人の財産の管理や身上監護をきちんと行えるようにするためです。

 親族後見人は、わからないことについて専門職の後見監督人に相談しながら後見活動を行えるというメリットもあります。

【成年後見制度を活用すると良い場合】(※支援を受ける方の判断能力の低下が成年後見制度の利用要件になります。)

 ・本人の判断能力が衰え、預貯金の出し入れや日々の生活費等の支払いが難しくなった。

 ・家族はいるが本人の生活や金銭管理について専門の方にお願いしたい。

 ・最近、通帳を無くしたり、お金の管理やデイサービス、ヘルパー等の介護サービスの契約が大変になってきた。

 ・家族が遠くにいるため、近くて定期的に生活や金銭管理、契約等の日常生活の支援をしてほしい。

 

【成年後見制度の活用に適さない場合】

 ・親の持っている不動産を価値のあるうちに売却したいが親(本人)の判断能力が衰えてきているため、何とかしたい。

 ・親の持っている不動産や預貯金等を家族が管理したい

 (※子供であっても親の財産は親のもので、子供が自由にできる財産ではありません。)

 ・金融機関や市役所等に相談に行ったら、成年後見人を付けた方が良いと言われた。

 (※目的を明確にしてから、制度を利用しましょう。目的にあった制度の活用をしましょう。)

 ・父親が亡くなり相続が発生して、手続きが面倒だし、母親の判断能力が曖昧な時があるので成年後見人を付けよう。

【成年後見制度審判開始申立の流れ】

 1.家庭裁判所に電話、又は訪問し、成年後見制度の利用開始について相談をします。

 ※お近くに弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士等のお知り合いがいれば、そちらに相談するとスムーズに行きます。

 2.家庭裁判所にて後見等の開始の手続きや流れについて説明を受けます。

 ※このとき、必要な書類やDVDにて成年後見制度とはどんな制度なのかという説明があります。

 3.申立書と必要書類、手数料を裁判所に提出します。

 ※申立書の作成や必要書類の作成、アドバイスについては専門職に依頼することができます。

 4.裁判所より本人の調査、申立人に事情調査が入ります。

 5.家庭裁判所の判断によって、成年後見人等が選任されます。

 ※申立人が成年後見人になってほしい方がなる場合もありますし、裁判所の判断で違う方がなる場合もあります。

【専門職後見人は主にどんな専門職が選ばれるか】

 ・弁護士

 ・司法書士

 ・行政書士

 ・社会福祉士 等

 

【申立手続きは誰ができるか】

 ・本人

 ・配偶者

 ・四親等内の親族

 ・市町村長

 ・後見人等になっている方

 ・検察官

【成年後見制度申立にかかる費用は】

 ・申立書作成手数料・・・10万円~15万円

  ※弁護士、司法書が作成可能です。

 ・医師の診断書・・・5千円~1万円

 ・本人の戸籍謄本、住民票等・・・千円程度

 ・本人の登記されていないことの証明書・・・300円程度

 ・固定資産税評価額証明書等・・・600円程度

 ・郵便切手・・・5千円程度

 ・登記手数料(収入印紙)・・・2600円

 ・申立手数料(収入印紙)・・・800円

  ※案件によっては「鑑定書」が必要になる場合は鑑定書代、5万円~10万円が別途必要になります。

【成年後見制度利用にかかる費用は】

 本人の財産や成年後見人の作業量によって報酬は変わります。成年後見人の報酬は本人の財産より、家庭裁判所が決めます。

 ・本人の財産が1千円以下の場合・・・月額2万円~3万円

 ・本人の財産が1千万円を超え、5千万円以下の場合・・・月額3万円~4万円

 ・本人の財産が5千万円を超える場合・・・月額5万円~6万円

 ※あくまで参考程度の金額です。仙台市で公に金額をアップしているものはないため、東京都立川区のものを参考に載せております。

それでは生活保護や金銭的に大変な方には成年後見制度は使えない・・・・

と考える方もいると思います。一時期前はそうでした。

 

 そのため、市町村により、内容は違いますが、「成年後見制度利用支援事業」というものがあります。

 各市町村によって制度の内容が違いますので、実際に利用する場合はまずは、市町村にご相談ください。

 仙台市の場合・・・後見開始の申立をする前に「仙台市成年後見総合センター」に連絡をしてください。

 石巻市の場合・・・市役所保護課にて「成年後見制度利用支援事業」が可能。現在は市町村長申立時のみ対応可能。

 または、お近くの地域包括支援センター及び当事務所へご連絡ください。